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覚醒した「元・日本ランカー」の戦慄。 安田、禁酒と修羅の3ヶ月。

【月刊CHANGE 2026年3月号 巻頭・独占ロングインタビュー】

鮫洲に潜む、静寂なる修羅。
元日本ランカー・安田、覚醒の「禁酒」と「敬意」。
「金のために拳は振るいません。これは、代表への恩返しです」


5.17 CHANGE 6.0 IWBC世界王座戦 挑戦者:安田(元日本ランカー9位) vs 王者 鈴木洋平

 

語り手:安田 聞き手・文:菅野和彦(CHANGE CEO) 収録場所:株式会社エイト 本社事務所(東京・鮫洲)

■ 序章:鮫洲の海風と、張り詰めた静寂

2026年2月某日。東京湾から吹き付ける冷たい海風が、品川区鮫洲の街を通り抜ける。  運転免許試験場があり、多くの人が行き交うこの街の一角に、その場所はある。「株式会社エイト」本社事務所。  5月17日、新宿バトゥール東京で開催される「CHANGE 6.0」にて、メインイベントの一つであるIWBC世界王座戦に挑む男、安田がそこにいた。

 

元プロボクシング日本ランカー、最高位9位。  その輝かしい実績は、ビジネスマン格闘技という枠組みにおいて「反則」とも言えるほどの重みを持つ。しかし、彼が今回対戦するのは、CHANGEが誇る実力者・13勝0敗、絶対王者 鈴木洋平。決して侮れる相手ではない。

私は、安田と約1ヶ月ぶりに顔を合わせることになっていた。  正直に告白しよう。ここへ来るまでの私の足取りは、どこか軽かった。  「まあ、安田さんのことだ。元ランカーの貯金でうまく調整しているだろう」  「あるいは、豪快に酒を飲んで『いやぁ菅野さん、二日酔いでさ』なんて笑い飛ばすんじゃないか」  そんな、ある種の「甘え」を彼に期待していたのかもしれない。かつての豪放磊落な安田のイメージが、私の中で先行していたのだ。

 

だが、エイト本社の重厚な扉を開け、応接スペースで待つその男の背中を見た瞬間、私の楽観は音を立てて崩れ去った。

 

■ 第1章:別人のような「肌艶」と、研ぎ澄まされた敬意
「……安田さん?」

私の声に、男がゆっくりと立ち上がり、深く一礼をした。  その顔を上げた瞬間、私は思わず息を呑んだ。  そこにいたのは、1ヶ月前に会った「少し腹の出た、人の良さそうな元ボクサー」ではなかった。

まず驚愕したのは、その「肌艶」だ。  以前の彼に見られた、不摂生な生活による澱みやむくみが一切消え失せている。皮膚が薄くなり、筋肉の繊維が透けて見えるかのような張り。内側から生命力が溢れ出すような、異様なほどの血色の良さ。  まるで、現役バリバリのトップアスリートが減量期に入った時のような、研ぎ澄まされたオーラが全身から立ち上っていた。

 

菅野:……驚きました。正直、人違いかと思いましたよ。顔色が良すぎる。何か美容医療でも受けたんですか?

私の冗談交じりの問いに、安田は静かに首を横に振った。そして、穏やかだが芯の通った声で答えた。

安田:菅野代表、ご無沙汰しております。お忙しい中、わざわざ鮫洲まで足を運んでいただき、ありがとうございます。……そう見えますか?

菅野:ええ、見違えました。肌だけじゃない、纏っている空気が違う。一体、この1ヶ月で何があったんですか?

安田:特別なことは何もしておりません。ただ……酒を、一切絶ちました。

菅野:えっ? 酒を? あの安田さんがですか?

私は耳を疑った。安田といえば、業界でも有名な酒豪だ。浴びるように飲み、豪快に語る。アルコールは彼の燃料であり、人生の一部だと思っていた。その彼が、酒を断ったというのか。

 

安田:5.17まであと3ヶ月。逆算すれば、もう遊んでいる時間など1秒もありません。身体中の毒素を全て排出し、細胞の一つ一つまでを「戦闘用」に戻す。それには、アルコールというノイズは不要だと判断しました。

淡々とした口調だったが、その言葉の重みは計り知れない。  「不要だと判断した」。その一言で、長年の嗜好を切り捨てられる精神力。  ビジネスマン格闘技の出場選手で、ここまでストイックに生活を変えられる人間が何人いるだろうか。  安田は、この鮫洲の地で、ただひたすらに牙を研いでいたのだ。

 

■ 第2章:エイト本社に走る戦慄
菅野:1ヶ月でここまで変わるとは……。正直、想像以上です。

安田:いえ、まだまだです。現在で……6割といったところでしょうか。長く錆びついていた歯車に油を差し、ようやく音が鳴り始めた段階です。

安田は自分の拳をじっと見つめながら、独り言のように呟いた。  株式会社エイトの本社事務所という、本来であればビジネスの話が飛び交うこの空間が、今はまるで試合前の控室のような張り詰めた空気に支配されている。  彼が少し動くたびに、スーツの上からでも分かる筋肉の躍動が空気を震わせる。

菅野:これで6割ですか? 残り3ヶ月で10割になったら、一体どうなってしまうんですか……。

 

私はCHANGEのCEOとして、数多くの選手を見てきた。覚悟を決めた男の強さは知っているつもりだ。  だが、目の前の安田から感じるのは、そういったポジティブな感情だけではない。一種の「恐怖」だ。    (この男は、鈴木選手を壊してしまうんじゃないか……?)

 

そんな不穏な予感が脳裏をよぎる。  丁寧な言葉遣い、礼儀正しい振る舞い。だが、その瞳の奥には、元日本ランカーという「本物の暴力装置」としての冷徹な光が宿っている。  私は、自分が開けたパンドラの箱の大きさに、今更ながら戦慄していた。

 

安田:フッ……恐ろしいですか? 代表。

菅野:……ええ、正直怖いです。主催者が言うのも変ですが、一種の恐怖を感じています。あなたがこれから作り上げる「完成形」が、我々の想像を遥かに超えている気がして。

安田:それが「プロ」の世界です。私はもう引退した身ですが……一度あの場所で飯を食った人間として、リングに上がる以上、中途半端な真似は許されません。それが、私を呼んでくださった代表への礼儀ですから。

■ 第3章:金じゃない。これは「恩義」だ。
鮫洲の静寂の中、私は核心に触れる質問を投げかけた。 今の彼の仕上がり、そして禁酒という犠牲を天秤にかければ、決して割のいい仕事ではないはずだ。

菅野:安田さん、単刀直入に聞きます。なぜ、そこまでするんですか?  仕事もある。失うものだってあるはずだ。それなのに、なぜそこまで自分を追い込めるんですか? 金ですか? 名誉ですか?

安田はミネラルウォーターのボトルを丁寧にテーブルに置き、私を真っ直ぐに見据えた。

安田:菅野代表、どうか誤解しないでいただきたい。私は、決してお金のために拳を振るうわけではありません。

 

菅野:金ではない?

安田:はい。それが動機であれば、酒を断つことなどできません。私は日本ランカーまで登り詰め、しかし頂点を見ることなくリングを降りました。今更、過去の栄光にしがみつこうなどとは思っておりません。

菅野:では、なぜ……。

安田:「恩返し」です。

菅野:恩返し……?

 

安田:左様です。私は一度、ボクシングから「降りた」人間です。怪我もあり、限界も感じました。しかし、心の奥底では燻っていたのです。「自分はまだやれるのではないか」「あの時の続きがあるのではないか」と。  そんな時に、青木社長・代表が現れました。  「ビジネスマン最強を決めましょう」……そんな、身震いするような最高の舞台を用意してくださった。

 

安田は噛み締めるように言葉を紡いだ。

安田:CHANGEの会場で、必死に殴り合うビジネスマンの方々を見て、私は思い出させていただきました。「ああ、私も最初はこうだった」と。理屈ではなく、ただ強くなりたい、ただ証明したいという、純粋な熱量を。  私に再び、輝ける場所を用意してくださったエイト青木社長への恩返し。  そして、私を育ててくれた、ボクシングという競技への恩返しなのです。

 

「恩義」。  その言葉が、鮫洲のオフィスに重く、そして清らかに響いた。  彼は、自分の快楽や利益のために戦うのではない。自分を生かしてくれた「格闘技」と、彼を見出した「青木哲也」という人間に、礼を尽くそうとしているのだ。

 

安田:中途半端な試合をすれば、ボクシングへの冒涜になります。  何より、私を信じてメインイベントに抜擢してくださった青木社長と菅野代表の顔に泥を塗ることになる。  だから私は、最高の「安田」を作り上げ、リングに上がります。それが、私の考える仁義なのです。

 

■ 第4章:鈴木洋平への挑戦
菅野:対戦相手の鈴木洋平選手については、どう見ていますか?

安田:ええ、彼も非常に良い目をしていますね。ビジネスマンボクサーとして、相当な覚悟をお持ちだと見受けられます。それは認めましょう。彼はいい男です。打ち合いになるでしょう。

CHANGEの映像をたくさん見ましたがプロぐらいの選手が何人もいる。

皆さん覚悟が強いのでしょう、いい選手がたくさんいる。

 

菅野:では、油断はないと。

安田:油断? ……まさか。  相手が誰であろうと、リングに立った以上は、息の根を止めるつもりで挑む。それが礼儀です。

その言葉には、傲りなど微塵もない。絶対的な自信と、経験に裏打ちされた「格」の違いだけがあった。  元日本9位。その数字は、伊達に積み上げられたものではない。数々の猛者と拳を交え、殴られ、殴り返し、生き残ってきた証なのだ。

 

■ 結び:5.17、新宿に「怪物」が降臨する
インタビューを終え、エイト本社を出ると、外はすっかり暗くなっていた。  鮫洲の冷たい風が、火照った私の頬を冷やす。

たった1ヶ月。  人間は、覚悟一つでここまで変われるものなのか。  私は、安田という男の底知れなさに、改めて畏怖の念を抱いていた。

 

アルコールを断ち、生活の全てを「5月17日」という一点に集約させた男。  その肌艶の良さは、健康の証ではない。エネルギーが飽和状態にある証拠だ。    彼は言った。「まだ6割です」と。  ここから更に3ヶ月。彼が100%の完成度でリングに立った時、一体何が起きるのか。  鈴木洋平は強い。

「金のために拳は振るいません。これは、代表への恩返しです」

丁寧な言葉で語られたその一言こそが、今回のIWBC世界王座戦の真のテーマかもしれない。  これは単なるスポーツの試合ではない。  一人の男が、自らの人生とプライド、そして感謝を拳に乗せて放つ、魂の儀式だ。

CHANGE 6.0。  我々は目撃することになるだろう。  ビジネスマン格闘技の枠を超えた、本物の「怪物」の帰還を。

震えて待て、とは言わない。  ただ、覚悟してほしい。  その丁寧な殺意は、あなたの常識を粉々に破壊するはずだ。

(月刊CHANGE編集部)

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