何者でもなかった私が、リングに立つ理由。西ヶ谷美佑、23歳の覚悟。
月刊CHANGE-WEB版
「試合は怖い、だけど今 格闘技で変わりたい」
――何者でもなかった私が、リングに立つ理由。西ヶ谷美佑、23歳の覚悟。

【インタビュアー】 CHANGE 代表 菅野和彦
【インタビュー対象者】 西ヶ谷美佑 (23歳、コンビニエンスストア勤務)
取材日:2026年2月某日
場所:横浜駅を一望する落ち着いた喫茶店
春の気配を含んだ柔らかな日差しが、大きな窓から差し込んでいた。眼下には、行き交う人々や車がジオラマのように見える横浜駅周辺の景色が広がっている。喧騒から切り離されたような静謐な空間で、その女性は少し硬い表情でコーヒーカップを見つめていた。
西ヶ谷美佑、23歳。普段はコンビニエンスストアで働く、ごく普通の女性だ。これまでスポーツの経験は一切ない。もちろん、格闘技の経験もゼロ。そんな彼女が、2026年5月17日に開催される「CHANGE 6.0」で、人生初のリングに立つ。
彼女はなぜ、危険を伴う格闘技の世界に足を踏み入れようと思ったのか。その瞳の奥には、どのような決意が秘められているのだろうか。CHANGE代表の菅野和彦が、彼女の心の内に迫った。

第1章:色のない日常と、漠然とした焦燥感
菅野: 本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。少し緊張されていますか?
西ヶ谷: いえ、こちらこそ、このような機会をいただきありがとうございます。……はい、正直すごく緊張しています。こんな素敵な場所でインタビューなんて、初めての経験なので。
菅野: リラックスしてください(笑)。今日は西ヶ谷さんのことを色々とお聞かせいただければと思います。早速ですが、西ヶ谷さんはスポーツ経験も格闘技経験も全くないとのことですね。プロフィールを見て、正直驚きました。
西ヶ谷: はい、全くありません。学生時代も文化部でしたし、運動神経にも自信がなくて。体育の授業も憂鬱なタイプでした。社会人になってからも、仕事と家の往復で、特に体を動かすようなことはしていませんでした。
菅野: 普段はコンビニエンスストアでお仕事をされているそうですね。失礼ながら、格闘技とは最も縁遠い世界にいるように感じます。
西ヶ谷: そう思います(笑)。毎日同じ時間に起きて、同じ場所に向かい、レジ打ちや品出しをする。お客様と接するのは好きですが、どこか機械的な毎日というか……。「私の人生、このままでいいのかな」という漠然とした不安はずっとありました。でも、特に趣味もなくて、何かに熱中した経験もなくて。気づけば23歳になっていました。

菅野: なるほど。色のない日常に、焦りのようなものを感じていたんですね。
第2章:CHANGE代表の葛藤「生半可な気持ちなら断る」
菅野: そんな西ヶ谷さんが、5月にデビュー戦を控えているわけです。正直に申し上げますが、最初に応募書類を見た時、参戦を受けるかどうか、非常に悩みました。
西ヶ谷: ……はい。
菅野: CHANGEは「ビジネスマン格闘技」を謳っており、未経験者の参戦も歓迎しています。しかし、それは安全性を軽視しているわけではありません。むしろ、未経験者だからこそ、細心の注意を払う必要があります。
スポーツのバックボーンがあれば身体の使い方もある程度わかっているでしょうが、西ヶ谷さんは全くの未経験。しかも、対戦相手は試合経験のある選手です。
西ヶ谷: そうですよね。私も応募ボタンを押した後、「本当に私なんかができるのかな」って、急に怖くなりました。自分がリングに立って、スポットライトを浴びて戦う姿なんて、全く想像もしていませんでしたから。
菅野:私は西ヶ谷さんにかなり厳しいことを言いました。「生半可な気持ちで格闘技を甘く見ているのであれば、断ろうと思っている。危険も伴うスポーツだから、怪我をするかもしれないし、怖い思いもするだろう」と。
西ヶ谷: はい、でも、その言葉で逆に目が覚めたというか、「これは遊びじゃないんだ」と痛感しました。
菅野:ただ、リングの上では誰も助けてくれません。最終的には自分自身の覚悟が全てになりますから。その覚悟を問いただしたかったんです。
西ヶ谷: はい、理解しています。菅野さんの言葉は、私のことを真剣に考えてくれているからこその厳しさだと受け止めました。

第3章:運命を変えた日、父の背中が教えてくれたこと
菅野: 私の厳しい言葉に対して、西ヶ谷さんは真っ直ぐな目でこう言いましたね。「試合は怖いです。でも、変わりたいんです」と。その言葉を聞いて、ハッとさせられました。
改めてお聞きしますが、なぜ危険を伴う格闘技をやってまで、「変わりたい」と思ったのですか?
西ヶ谷: ……先ほどもお話ししたように、今の自分に自信が持てなくて、何もない自分が嫌でした。何か新しいことに挑戦して、自分を変えたいともがいていたんです。そんな時に、父の試合を見たのがきっかけでした。

菅野: お父様も格闘技をされていたんですね。それはいつ頃のことですか?
西ヶ谷: はい、1年半ほど前です。父は昔から格闘技が好きで、趣味でジムに通っていたのは知っていたのですが、試合に出るなんて聞いたことがなくて。突然「今度試合に出るから見に来い」って言われて、母と二人で驚きながら会場に向かいました。
菅野: 実際にお父様の試合を見て、いかがでしたか?
西ヶ谷: 衝撃でした。普段は優しくて、どちらかというと穏やかな父が、リングの上では鬼のような形相で相手に向かっていくんです。殴り合って、蹴り合って、時には倒されて……。見ているこっちが痛くなるような光景でした。正直、最初は怖かったです。

菅野: そうでしょうね。身内が殴り合っている姿を見るのは、慣れていない人にとっては恐怖でしかないと思います。
西ヶ谷: でも、試合が進むにつれて、恐怖とは違う感情が湧き上がってきたんです。父は何度もパンチをもらって、顔も腫れて、フラフラになっていました。それでも、絶対に諦めないんです。倒されても、すぐに立ち上がって、また相手に向かっていく。その姿が、すごく……すごくかっこよかったんです。
菅野: ……なるほど。
西ヶ谷: 試合は判定で父が負けてしまいました。でも、リングを降りてきた父の顔は、今まで見たことがないくらい晴れやかで、充実感に満ちていました。その時、思ったんです。「私もあんな風になりたい」って。「強くなりたい、変わりたい、何かに本気でぶつかってみたい」って、心の底から思いました。
菅野: お父様の姿が、西ヶ谷さんの背中を強く押したんですね。言葉ではなく、体を張った姿で。
西ヶ谷: はい。父のように、自分も何かに人生をかけて打ち込んでみたいと思ったんです。それが、たまたま格闘技だっただけで。もし父が他のことをしていたら、それをやっていたかもしれません。でも、あの時の父の姿が脳裏から離れなくて、気がついたらCHANGEの応募フォームを開いていました。
第4章:「CHANGE」=「変わる」。彼女の覚悟と団体の理念
菅野: 西ヶ谷さんのお話を聞いて、胸が熱くなりました。これまでマッチメイクを200試合近く行い、様々な選手と向き合ってきましたが、西ヶ谷さんからは格闘技に、いや、「変わる」ということに人生をかけているような、並々ならぬ決意を感じます。
西ヶ谷: これまで何かに熱中したこともない私ですが、これからは格闘技が趣味に、いや、人生の一部になると思います。今はそれくらい本気です。
菅野: その言葉を聞けて嬉しいです。私たちの団体名「CHANGE」には、「変わる・変化」という意味が込められています。近年高まる格闘技ブームの中で、CHANGEは素人でも参加できる、安全面を重視したスポーツイベントとして活動してきました。
西ヶ谷: はい、存じています。だからこそ、未経験の私でも挑戦できるかもしれないと思いました。
菅野: 格闘技には物凄いパワーがあります。覚悟を決めてリングに上がった選手が、その後の人生を劇的に変えたり、仕事やプライベートが好転していく姿を、私は何度も見てきました。西ヶ谷さんのように、格闘技を通して「自分を変えたい」と強く願う人を、私たちは全力で応援したいと思っているんです。
西ヶ谷: ありがとうございます。菅野さんにそう言っていただけて、すごく心強いです。
菅野: ただし、先ほども言いましたが、スポーツ未経験者が格闘技を行うのは、いくらCHANGEが安全面に配慮しているとはいえ、リスクはゼロではありません。ドクターによる事前のメディカルチェックも厳重にお願いします。
西ヶ谷: はい、。今はジムに入会して、基礎体力作りから始めています。毎日筋肉痛で体が悲鳴を上げていますが(笑)、それすらも生きている実感というか、充実感に繋がっています。
菅野: それは頼もしいですね(笑)。初めてグローブをつけて、ミットを打った時はどうでしたか?
西ヶ谷: 思った以上に難しかったです!全然いい音が鳴らないし、すぐに息が上がってしまうし。でも、汗を流して体を動かすことが、こんなに気持ちいいものだとは知りませんでした。少しずつですが、できなかったことができるようになる感覚が嬉しくて。
菅野: 素晴らしいですね。その「できた」という小さな成功体験の積み重ねが、自信に繋がっていくはずです。わかりました。西ヶ谷さんの挑戦、CHANGEとして全力でサポートさせていただきます。対戦相手も決まりました。決して楽な相手ではありませんが、今の西ヶ谷さんなら、きっと素晴らしい試合ができると信じています。
西ヶ谷: よろしくお願いします!絶対に後悔しないように、残りの期間、死に物狂いで練習します。
第5章:リングの向こう側に見える未来
菅野: 最後に、デビュー戦に向けての意気込みを聞かせてください。どんな試合を見せたいですか?
西ヶ谷: ……正直、技術的なことはまだまだ全然ダメだと思います。相手選手の方が経験も実力も上でしょうし、一方的にやられてしまうかもしれません。怖い気持ちも、まだ消えてはいません。
菅野: はい。
西ヶ谷: でも、リングに上がったら、絶対に逃げたくありません。父がそうだったように、どんなに打たれても、倒されても、最後まで諦めずに前に出続けたい。不格好でもいいから、私の「変わりたい」という必死な思いが、見てくれる人に少しでも伝わるような、そんな試合がしたいです。
菅野: 素晴らしい決意だと思います。私は常々思っているのですが、技術的に洗練されたプロの試合も素晴らしいですが、こういった初心者の、人生をかけた剥き出しの格闘技こそが、見る人の心を揺さぶり、感動させる力があると思っています。
西ヶ谷: そう言っていただけると、少し気が楽になります。
菅野: 西ヶ谷さんの試合を見て、「私も何か挑戦してみようかな」「明日からまた頑張ろう」と、勇気や希望をもらう人がきっとたくさんいるはずです。勝敗はもちろん大切ですが、それ以上に、西ヶ谷さんがリングの上で何を見せてくれるのか、私はそれが楽しみでなりません。
西ヶ谷: はい、プレッシャーはありますが、それを力に変えて頑張ります!
菅野: CHANGEでの西ヶ谷さんの活躍、そしてリングを降りた後の西ヶ谷さんの人生がどう「CHANGE」していくのか、心から楽しみにしています。今日は本当にありがとうございました。
西ヶ谷: こちらこそ、ありがとうございました!5月17日、リングの上で精一杯戦います!
(窓の外では、春の風が強く吹き始め、街路樹を揺らしていた。季節は確実に移ろい、新しい何かが始まろうとしている。西ヶ谷美佑の挑戦もまた、今まさに始まろうとしていた。)
【編集後記】
インタビューを終え、喫茶店を出ると、少し冷たい春の風が心地よかった。
西ヶ谷美佑さん。一見すると、どこにでもいる大人しそうな女性だ。しかし、その瞳の奥には、決して揺らぐことのない強い意志の光が宿っていた。「変わりたい」――。そのシンプルで切実な願いは、彼女を突き動かす強力なエンジンとなっている。
スポーツ経験も格闘技経験もない彼女が、危険を伴うリングの世界に飛び込むことは、並大抵の覚悟ではできないだろう。恐怖や不安がないと言えば嘘になるはずだ。しかし、彼女はそれらを受け入れ、乗り越えようとしている。父親の背中が教えてくれた、挑戦することの尊さを胸に刻んで。
CHANGEという舞台は、そんな彼女のような名もなき挑戦者たちのためにある。勝つことだけが全てではない。リングに上がるまでの過程、そしてリングの上で見せる生き様こそが、人々の心を打つのだ。
西ヶ谷さんのチャレンジは、団体名「CHANGE」に込めた「人生を変える場、人生を変えるきっかけに」という原点を思い出させてくれた。
彼女の挑戦が、多くの人に感動を与え、新たな一歩を踏み出すきっかけとなることを確信している。5月17日、彼女がどのような「変化」を見せてくれるのか。今から楽しみでならない。
CHANGE 代表 菅野和彦
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西ケ谷 美佑
生年月日2003年9月30日身長 / 体重155cm / 63.7kg
出身 地神奈川県横浜市 職業コンビニ店長 格闘技歴6ヶ月(デビュー戦)
得意技ジャブ入場テーマred eye「戦う理由」
憧れの格闘家皇治
■ FIGHTER’S VOICE「リングの上に立つことで、自分に自信をつけたい。まだまだボクシングは下手ですが、全力で戦います!」
■ ABOUT MEスポーツ経験なし、格闘技歴わずか6ヶ月。コンビニ店長として働く彼女が、リングという非日常の世界に足を踏み入れる理由はただ一つ、「自分を変える」ため。父のような、多くの人に慕われる人間になることを夢見て、新たな挑戦が始まる。勝ったら自分に自信をつけて、もっと強くなりたい――。
家族、職場、ジムの仲間たちの応援を背に、西ケ谷美佑の「戦う理由」が今、リングで解き放たれる。■ FAVORITE好きな食べ物:チョコレート趣味:音楽鑑賞
